漢方薬

腸内環境を整えて病気を未然に防ぐ①

たつおか新聞 2026年5月号

腸内環境を整えて病気を未然に防ぐ①

「腸」はもう一つの臓器

先日、京都で開催された研修会に参加し、慶應義塾大学先端生命科学研究所の福田真嗣特任教授による「腸内環境を整えて病気を未然に防ぐ」という講演を聞いてまいりました。

最近、「腸活」という言葉を耳にする機会が増えていますが、実は人の腸内にはおよそ1000種類、40兆個とも言われる腸内細菌が存在しています。この数は人間の細胞数にも匹敵すると言われており、腸内細菌は「もう一つの臓器」とも呼ばれています。

腸内細菌は、食物繊維などをエサとして増殖し、その過程でさまざまな代謝物質を作り出します。その物質が血液を通じて全身へ運ばれ、健康や病気に大きな影響を与えていることが分かってきました。

健康のカギを握る「短鎖脂肪酸」

特に注目されているのが、「短鎖脂肪酸」と呼ばれる物質です。これは酢酸・酪酸・プロピオン酸などの総称で、腸内細菌が作り出す重要な代謝産物です。

短鎖脂肪酸には、腸のバリア機能を高める働きがあるだけでなく、免疫調整やエネルギー代謝、さらには脳機能にも関わっていることが明らかになっています。

最近では、肌荒れやアレルギー、疲れやすさなどにも腸内環境が関係していることが分かってきており、腸内環境を整えることが全身の健康につながると考えられています。

持久力や気分にも影響する腸内細菌

青山学院大学の駅伝選手の研究では、成績の良い選手ほど特定の腸内細菌が多いことが確認されています。また、その菌を動物に投与すると持久力が向上したという研究結果もあります。

さらに近年では、「脳腸相関」という考え方も注目されています。腸と脳は神経やホルモン、免疫を通じてお互いに影響し合っており、腸内環境が気分や意欲、ストレスにも関係している可能性があるのです。

漢方薬と腸内細菌の深い関係

実は、漢方薬の効き目にも腸内細菌が関係しています。漢方薬は複数の生薬から構成されていますが、その成分は腸内細菌によって分解・変換されることで、初めて効果を発揮する場合があります。

つまり、同じ漢方薬を服用しても、「腸内環境によって効き方が異なる」可能性があるということです。今後は一人ひとりの腸内環境に合わせた漢方選びが、より重要になると考えられています。

食事が腸内環境を作る

腸内細菌は比較的安定しており、短期間では大きく変化しにくいと言われています。しかし、長期間の食生活によって腸内環境は少しずつ変化していきます。

つまり、「何を食べるか」が腸内細菌を決める重要な要素なのです。食物繊維や発酵食品を意識して取り入れることが、腸内環境を整える第一歩になります。

私たちが目指すべきなのは、病気になってから治療するのではなく、病気になる前に予防する医療です。そのカギを握る存在として、これからますます腸内環境が注目されていくでしょう。

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